コイン単価から逆算する「機械割の収束に必要な回転数」

この記事の読み方

まず各セクションの本文で「結論」をやさしく説明します。
その下にある▼詳しく(クリックで開く)を開くと、統計的な根拠や計算式といった踏み込んだ内容が読めます。
数字だけ知りたい方は本文だけ、理屈まで知りたい方は詳細も、という形でお好みに合わせて読んでください。

はじめに

「設定どおりに打てば、いつか機械割どおりの出玉に収束する」——よく聞く言葉です。でも、その「いつか」が具体的に何ゲームなのかを、きちんと見積もった例はあまり見かけません。

この記事では、各機種のコイン単価を手がかりに、機械割が「95%の確率で誤差±1%以内に収まる」ために必要な回転数を試算します。先に結論を言うと、その回転数は多くの人の直感をはるかに超えます。

そして同じくらい大事なのが、この試算がどれだけの「仮定」の上に成り立っているかです。数字の出し方と、その弱点の両方を、包み隠さずお伝えします。

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1. そもそも「収束」とは何を指すのか

結論

この記事では「収束」を、こう定義します。

ある機種を n ゲーム回したとき、そこから計算した機械割が、本当の機械割の±1%以内(たとえば97%なら96〜98%)に、95%の確率で収まる。そのために必要な n は何ゲームか。

ポイントは、この「95%の確率で±1%以内」という基準が、実はかなり厳しいということです。この点は後の章で詳しく触れます。

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誤差±1%は絶対値(パーセントポイント)で扱います。相対1%(97%の1%=0.97pt)ではありません。パチスロで「機械割±1%」と言うときの通常の語感と一致させています。
信頼水準95%は両側です。範囲からはみ出る5%は、上側2.5%・下側2.5%に分かれます。正規近似を用いると、この95%に対応する係数(z値)は1.96です。

2. 計算の土台となる考え方

結論

必要回転数は、次のたった1つの要素でほぼ決まります。それがσ(シグマ)です。σは「1ゲームあたりの出玉の振れ幅(ばらつき)」を表す数字だと考えてください。σが大きい台=荒い台ほど、収束には多くの回転数が必要になります。

しかも、必要回転数はσの2乗に比例します。σが2倍なら必要回転数は4倍。だからこそ、σをいかに正しく見積もるかが、この試算のすべてを左右します。

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3枚掛けで、1ゲームあたり差枚(払出−投入)の標準偏差を σ とすると、機械割の推定値の標準誤差は次のようになります。

SE = σ / (3√n)

この誤差の幅(95%区間の半幅)を0.01以下にする条件を解くと、必要回転数は

n ≥ (1.96 × σ / 0.03)² ≒ 4268 × σ²

となります。σが2乗で効いていることが、式の上でもはっきり分かります。

3. σ(荒さ)はどうやって求めるのか

結論

σの求め方は、機種のタイプで2通りに分かれます。

ノーマル機(ジャグラーなど):ボーナス確率や獲得枚数が公表されているので、そこから計算で直接求められます。信頼度は高いです。
AT機(スマスロなど):肝心のAT獲得枚数の分布が非公開なので、直接は求められません。そこでコイン単価を手がかりに、間接的に逆算します。こちらは仮定が多く、精度は落ちます。

つまり、この記事の表のうちノーマル機の数字は比較的堅く、AT機の数字は参考値、という温度差があることを、最初に押さえてください。

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ノーマル機(解析的に求める)

役ごとの出現確率pᵢと払い出しvᵢから、分散を直接計算します。

Var(X) = Σ pᵢ・vᵢ² − (Σ pᵢ・vᵢ)²

マイジャグラーV設定1で計算するとσ≈16。分散の大半をBIGフラグ単独が占める「ジャックポット構造」が特徴です。

AT機(コイン単価から逆算する)

コイン単価とは、売上をアウトで割った1ゲームあたりの実質投資額です。売上は「どれだけ現金を投入したか」で決まり、これは累積差枚の落ち込み(ドローダウン)に対応します。ランダムウォークの最小値はσ√nに比例するため、σ ∝ コイン単価という関係を仮定できます。

この比例定数を、σが既知のマイジャグラーV(σ≈16、実際のコイン単価2.0円)で較正し、他機種に適用しました。

較正が妥当かの検証

σを役構成から独立に求められる別のノーマル機で、予測と実測を突き合わせました。

機種σ(役構成から)単価(予測)単価(実際)誤差
ニューキングハナハナV19.12.28円2.4円−4.8%
スマスロ サンダーV21.42.36円2.3円+2.8%

いずれも誤差5%以内でした。ただし検証できたのはどちらもノーマル機である点に注意が必要です(後述の弱点B)。

4. 試算結果:16機種の必要回転数

結論

コイン単価の低い順に並べた、16機種の必要回転数です。数値は有効数字2桁、年数は年間の稼働ゲーム数で割ったものです。

機種コイン単価σ必要回転数年10万G年50万G年100万G
マイジャグラーV2.0円16約150万G15年3.0年1.5年
甲鉄城のカバネリ 海門決戦3.1円26約440万G44年8.8年4.4年
スマスロモンキーターンV3.1円26約440万G44年8.8年4.4年
マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝3.2円27約470万G47年9.4年4.7年
炎炎ノ消防隊23.2円27約470万G47年9.4年4.7年
スマスロ北斗3.3円28約520万G52年10年5.2年
スマスロ 北斗の拳 転生の章23.5円29約580万G58年12年5.8年
戦国乙女5 業火を穿つ宿焔の双刃3.5円29約580万G58年12年5.8年
ゴッドイーター リザレクション3.5円29約580万G58年12年5.8年
からくりサーカス24.1円35約830万G83年17年8.3年
L東京喰種4.1円35約830万G83年17年8.3年
革命機ヴァルヴレイヴ24.2円36約860万G86年17年8.6年
かぐや様は告らせたい4.2円36約860万G86年17年8.6年
ミリオンゴッド-神々の軌跡-4.6円39約1,000万G100年20年10年
沖ドキ!DUOアンコール4.6円39約1,000万G100年20年10年
ビッグドリーム5.7円49約1,600万G160年32年16年

最も緩いマイジャグラーVでも約150万G、年10万G稼働なら約15年かかります。
最も荒いビッグドリームはその10倍以上、1,600万Gです。
コイン単価が2倍になると必要回転数はおよそ4倍になります(σが2乗で効くためです)。

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5. 基準を緩めると、数字は一気に下がる

結論

「95%の確率で±1%以内」は、最も厳しい部類の基準です。求める精度を少し緩めるだけで、必要回転数は劇的に減ります。

機種±1%±2%(1/4)±3%(1/9)
マイジャグラーV約150万G約38万G約17万G
スマスロ北斗約520万G約130万G約58万G
ビッグドリーム約1,600万G約400万G約180万G

±3%まで緩めれば、年50万G稼働でビッグドリームでも3.6年、マイジャグラーVは4ヶ月弱です。ですから「1,600万G」という数字だけを見て「収束しない=運がすべて」と受け取るのは誤りです。正しくは「とても高い精度を求めると、時間がかかる」ということです。

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必要回転数は誤差の2乗に反比例します。誤差を2倍緩めれば1/4、3倍緩めれば1/9です。

別の見方もできます。σ=39(ミリゴ相当)の台でも、50万G回した時点で理論値からの誤差は、±1%以内に約34%、±2%以内に約61%、±3%以内に約81%が収まります。つまり大半の人は「だいたい出玉率どおり」と感じる範囲にいるのです。「95%×±1%」という厳しい基準を選んでいるからこそ、大きな数字になっている、という点は自覚しておくべきだと考えています。

収束に必要な試行回数計算ツール

6. この試算が乗っている「仮定」

結論

この試算は、いくつもの仮定の上に成り立っています。硬派な読者のために、弱点を隠さず挙げます。特に大きいのは次の2つです。

コイン単価から荒さ(σ)を推定している点:実測値ではありません。コイン単価は客の入れ替わりなどにも左右されるため、σが実際とズレる可能性があります。
検証がノーマル機でしかできていない点:表の主役であるAT機で、同じ精度が出る保証はありません。

これらの理由から、具体的な数字そのものより、大まかな桁感(規模感)として受け取っていただくのが正しい使い方です。

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弱点A(最重要):コイン単価とドローダウン(MY)は別物

本モデルは「コイン単価≒累積差枚の最大の落ち込み」と仮定しました。しかし実務では、一撃の爆発力を表すMYと、吸い込みも含めた荒さを表すコイン単価は、別の指標として扱われています。さらに実際のコイン単価は1人の落ち込みではなく、複数人の投資の合算です。客が入れ替わって新規の現金投資が入れば売上は積み増され、勝った客が持ちメダルで粘れば投入は発生しません。「1人が打ち続ける」という前提は、この現実を捉えていません。

弱点B:検証がノーマル機に限られる

第3章の「誤差5%以内」の検証は、σを役構成から出せるノーマル機だけのものです。ノーマル機は客の回転が遅く、入れ替わりの影響が小さいため、たまたま誤差が小さく出た可能性があります。AT機で同じ精度が出る保証はありません。

弱点C:スマスロの設計を捕捉できない

有利区間や優遇冷遇で出玉の「波」が作り込まれていると、挙動が正規ランダムウォークから外れ、コイン単価とσの関係も崩れます。

弱点D:同じ単価なら同じ数字になる

コイン単価という1つの入力からσを出すので、同単価の機種は必ず同じ数字になります。表は「機種固有の値」ではなく「単価帯の目安」に過ぎません。

弱点E:独立試行を仮定している

AT機は天井・上乗せ・有利区間で強い自己相関を持ちます。実際の有効サンプルはnより小さく、必要回転数は本試算より増える方向に働きます。

弱点F:ヤメと設定変更を考慮していない

本試算は「1台を設定固定でヤメずに回し続ける」理想状態です。実戦ではヤメ方に偏りがあれば標本が歪み、日をまたげば設定が変わって収束先が定まりません。いずれも収束を遅らせる方向です。

7. おまけ:「確率の収束」と「機械割の収束」は逆になる

結論

面白い副産物があります。当選確率が収束するまでの回転数と、機械割が収束するまでの回転数では、設定との関係が逆向きになります。

確率の収束:高設定ほど当たりが軽く、同じ当選回数を早く引けるので、必要回転数は少なくて済みます。「高設定は早く分かる」という一般的な感覚はこちらです。
機械割の収束:高設定ほど、出玉に大きく効くBIGを多く引くのでσが増え、必要回転数はむしろ増えます

つまり直感(高設定は早く分かる)は「確率」については正しく、「機械割」については逆になる、というわけです。

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マイジャグラーVで実際に計算すると、機械割の収束に必要な回転数は設定1で約137万G、設定6で約169万Gと、高設定のほうが多くなります。高設定ほどBIGが軽くなり、240枚の大きなジャンプが頻発してσが増えるためです。

ただしこれはノーマル機の話です。AT機は出玉をBIGではなくATで増やすため、AT1回の獲得枚数の設定差次第で、向きが変わり得ます。一律には論じられません。

8. まとめ

結論

信頼できる部分:基本の考え方(必要回転数はσの2乗に比例)と、ノーマル機のσ。マイジャグラーVの約150万Gは比較的堅い数字です。
参考にとどめる部分:AT機のσ(コイン単価からの逆算)と、それに基づく必要回転数。弱点があるので、具体値ではなく桁感(数百万〜1千万G超)として見てください。
揺るがない事実:「機械割どおりの出玉にぴったり収束させるには、途方もない試行が必要」ということ。一方で「だから収束しない/運がすべて」は誤りです。

数字は、その背後にある仮定とセットで受け取っていただければと思います。それが、この試算を正しく使う唯一の方法です。